映画な談話室

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和田誠・川本三郎・瀬戸川猛資を読む - 忠さん

2017/03/09 (Thu) 18:06:07
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『今日も映画日和』(1999年・文藝春秋)映画通の和田誠(1936年生まれ)・川本三郎(1944年生まれ)・瀬戸川猛資(1948年生まれ)の年齢の違う三人の映画マニアが、あらゆるジャンルの映画を語り合った鼎談集。第一章「すべては映画館からはじまった」。やはり映画の思い出は、映画館と切り離せませんものね。三人とも東京で育った(和田は大阪生まれだが昭和20年に東京に転居)ので、戦後の東京の映画館の話がたくさん出てきて、私のような田舎育ちからすれば、都会はやっぱりすげ~!なあと羨ましいかぎりです。60年代に新宿に若い世代が集まるようになってきて、映画館もたくさんあったそうです。その中の一つ、「新宿文化」という映画館があって、ヨーロッパのアート・フイルムを上映する専門の映画館、今でいうミニシアター系の元祖。上映作品は飯島正、植草甚一・双葉十三郎ら十五人の顧問を中心に選定されたそうです。(残念ながら1975年に閉館)。そこでの川本氏の思い出話がなかなか洒落ています。

(川本)新宿文化は『ピアニストを撃て』(1960年・フランソワ・トリュフォー監督)のときがよかった。幕間に、アップライト・ピアノをステージに出して、ピアニストが弾いた。・・
あの頃の新宿には、ロードショーから二番館、三番館、名画座のすべてが揃ってたんですね。洋画も邦画も。

 粋な演出があったものですね。60年代の若者文化の中心地・新宿は活気にあふれていたのでしょうね。また、映画館にれっきとした格付けがあって、「ロードショー」「二番館(二本立て上映)」「三番館(三本立て上映)」とだんだん庶民的になっていき、ロードショーはお金がなくて見られなかった場合は、一ヶ月くらいして「二番館」に来るまでじっと我慢したと言っています。私の田舎(愛知県の三河湾に面した田舎町)は、歩いて15分くらいの所にいわゆる「三番館」に当たる映画館が一軒ありました。一階は木製の椅子席、二階は畳敷きでした。年寄りが二階で映画を見ずに寝ころんでいたのを覚えています。それでも気楽にはいけませんでした。バスで20分くらいいった町の洋画のロードショー館はまさに高嶺の花、でかいペンキで描かれた映画の看板を横目で見るしかできなかったですね。川本氏の記憶では、当時は三番館は三本立てで150円で日常的に気楽にいけるところだったと言っていますが、やはり都会の坊ちゃんは違いますね。

三人の共通点は、映画の黄金期といわれた1950年代(昭和30年代)に、ジャンルを問わず、名画であろうがB級であろうが、映画を浴びるほど見た体験を持っていることです。彼らの話は、当時の映画界の活況を彷彿させるものです。
 手書きのペンキで描かれた大きい看板にワクワクした話も共感できますよね。また、三人は、「最近いやなのは、カタカナ題名がむやみに多いこと」をあげており、昔の邦題は粋であったと述べています。

(瀬戸川)たとえば、『逢う時はいつも他人』(1960年 米国 リチャード・クワイン監督)。原題は『ストレンジャーズ・ホェン・ウィ・ミート』、絶対邦題の方が素晴らしい。
(瀬戸川)『マーズ・アタック!』(1996年米国 ティム・バートン監督)なんか、昔ならどう考えたって『火星人来襲』で決まりですよ。『風と共に去りぬ』が名画と言えるのは、「風と共に去りぬ」という言葉が、ストーリーも何も知らない人にさえ、或る種の感情を持たせるからで・・。

 川本氏は、邦題の『明日に向かって撃て!』『俺たちに明日はない』を絶賛しています。同感ですね。「風と共に去りぬ」という言葉を聞いただけで、「ロマンス」「別れ」を連想しますものね。瀬戸川氏は、「意図的な誤訳」の例として次の邦題をあげています。邦題は『友情ある説得』(1956年米国 ウイリアム・ワイラー監督)、原題は『フレンドリー・パースェーション』。

(瀬戸川)あれ、クエーカー教徒の話でしょ。だから本当はフレンドリー教会の説教(パースェーション)っていう意味なの、単に。そこをわざと誤訳して・・・最高に決まってます!

 面白い話ですね。この本の面白さはまだまだありますが、長くなりましたので、続きは稿をあらためたいと思います。

Re: 和田誠・川本三郎・瀬戸川猛資を読む - hirop URL

2017/03/10 (Fri) 10:27:26
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忠さん、いつもありがとうございます。
最近バタバタしていて、なかなか書き込みができませんm(__)m
続き、期待してますね!

Re: 和田誠・川本三郎・瀬戸川猛資を読む - 忠さん

2017/03/13 (Mon) 17:06:27
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 この本の第二章からは、テーマ別に三人の映画談義が続きます。見出しと取り上げているテーマを簡単に列挙しておきます。面白い本ですから、ぜひご一読を!

第二章 「43年目のマーズ・アタック!」 SF映画、怪獣映画を取り上げています。
第三章 「夏の終わりのボーイズ・ライフ」 ”夏”や”夏休み”を題材とした映画の話です。『十二人の怒れる男』は、夏という設定をうまく使っているという話がでてきます。なるほど、気づかなかったなあ。扇風機も回らない狭い部屋で、評決がなかなかまとまらなずに、陪審員たちがいらいらしていく様を描くのに、「真夏」が確かに効果的ですね。夏休みは、冒険、恋の季節でもあり、少年の成長譚として映画の格好のテーマですね。
第四章 「東西サラリーマン物語」 会社を舞台にした、サラリーマンの生活を描いた映画は、外国映画には少なく、出世や会社内での人間関係を扱った映画は日本映画の専売特許のようなものだと言っています。後半は、映画の登場人物の職業はどんなものが多いかという話に発展していきます。アメリカ映画では、セールスマン、建築家、広告代理店、新聞記者、編集者などが多いという話ですよ。
第五章 「野球場が呼んでいる」 ずばり、ベースボールの映画談。
第六章 「クリスマスが待ち遠しい!」 特にアメリカの映画にはクリスマスの映画が多いですね。私は、『素晴らしき哉、人生!』(1946年 米国 フランク・キャプラ監督)が素晴らしかったです。この監督については、稿をあらためて感想を書きます。
第七章 「スクリーンのなかの酒場で逢おう」 登場人物たちがどんな種類の酒を飲んでいたのか、なかなか細かい話がでてきます。西部劇には酒場が欠かせませんよね、酒場のカウンターをウイスキーのグラスが滑っていくシーンなどは定番ですし、憧れましたよね。酒場のシーンになれば、いよいよドラマが始まるって感じで、ワクワクしました。で、やっぱり喧嘩あり、撃ち合いが始まるんですものね。
第八章 「スポーツの時間」 野球以外のスポーツは何が題材になっているのか、で話は盛り上がります。もちろん筆頭は、ボクシング。
第九章 「法廷から正義が消えた」 法廷ドラマは、冤罪に挑む正義派の弁護士の活躍を描くパターンが多いですね。『アラバマ物語』もそうですね。軍法会議ものもアメリカ映画の一つの潮流だそうです。私は、法廷ドラマでは、『情婦』(1957年 米国 ビリー・ワイルダー監督)をお薦めします。
第十章 「悪妻は良妻を駆逐する」 悪妻を演じた女優、良妻を演じた女優論議です。
第十一章 「あの町この町」 映画でどの町、都市が描かれているのか、米国はもちろんのこと、ヨーロッパの各地をたくさん取り上げています。
第十二章 「大スターがいた」 映画スターの話で最終回も大盛り上がりでした。

とにかく話題満載、気楽に読める本ですから、まだの方はお読みください。へえ~!と感心しているうちに、「映画の見方」「映画の楽しみ方」が少しずつわかってくるような気になりますよ。また、上記のいずれかのテーマでご自分の好きな映画の感想を書いて頂けたらありがたいですね。

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